平安座島の年中行事

サングワチャー

サングヮチャーとは、旧暦三月三日から三月五日までの3日間、平安座で行われる最大行事、三月行事の総称です。

旧暦三月三日は上巳(じょうし)の節句で、沖縄では女性が潮水に手足を浸して穢れを落とす「浜下り」の日にあたります。 平安座島では一般的な浜下りとは異なり、浜下りに加えて、豊漁と漁の安全を祈願する祭祀が合わさった、平安座島ならではの伝統行事です。

また、この期間中は毎日各家庭で平安座島伝統のお菓子三月ポーポーが焼かれ、島のあちらこちらに「招豊年」の旗が立ちます。

初日(旧暦3月3日)

サングヮチャー初日、神人たちが野呂殿内(ヌンドゥルチ)の火の神の前で杯を交わしながら次のように歌い、今日から三月節句であることを告げます。

くとぅし さんぐゎちや はちばちどぅ やゆる やいぬ さんぐゎちや ちゃわんうさ
(今年の三月節句はほどほどに 来年の三月節句は華やかに過ごしましょう)

ドーグマチー

  • ドーグマチーの風景
  • ドーグマチーの風景
  • ドーグマチーの風景

午前9時頃から各家庭で重箱に詰めた御馳走をひろげ、海難事故で亡くなった御先祖を供養する日です。

平安座島は戦前まで「やんばる船(マーラン船)」などの交易を生業とする人々や海人(漁業)で生計を立てていた住民が大勢いて、そのため海難事故も多々ありました。

供養するときには、身内を海で亡くした各々の親族が一家揃って浜に降り、故人が海難事故があった方角へ向かい供養をします。供え物は、菓子や魚を入れた重箱一対、お茶、酒、白紙2枚、ウチカビ(紙銭)で、ウチカビを燃やし先祖を供養します。

このドゥーグマチーは三十三年忌が終わっても永代供養となっており、毎年この日に行われています。

ドゥーグマチーは「龍宮まつり」の呼び名が「ドゥーグマチー」に変化し、現在に至っていると考えられます。

夕方からはサングヮチャー遊びが自治会館ロビーで催されます。

かつては、男性たちは酒肴携帯(酒肴を持ち寄り)で俗称ンマラシ浜通りで祝宴を張り 、一方、女性たちは、神人達を中心に東川上商店(ミーサチヤー)前路上に集まって太鼓を打ち鳴らしサングヮチアシビを楽しみました。

現在は、男女ひとつになり自治会館に場所を替えています。

二日目(旧暦3月4日)

トゥダヌイュー

  • トゥダヌイュー
  • トゥダヌイュー
  • トゥダヌイュー

13時から自治会館裏手の通り「ちょうの浜」で女性神人たちによる豊漁大漁を祈願する紙事「トゥダヌイユー」が執り行われます。

高級魚であるタマンとマクブが、海人からノロと呼ばれる神女に奉納される行事なのですが、奉納の際、女性神人たちが太鼓、手拍子を歌に合わせて囃し立て女性の神人がまな板に置かれた魚を銛で突き、肩に担いで歌い踊ります。

唄は続き、「かぎやで風」や「唐船ドーイ」を踊って嘉例[カリー]をつけます。

エートゥーエーの唄(トゥダぬ魚[イユ]の唄)

  • (イーヘー、エートゥーエー エートゥーエー)

    エー伊集[いじゅ]ぬ樹[き]ーやよー イーヘー、エートゥーエー

    エーなずぬ樹[き]ーやよー イーヘー、エートゥーエー

    エーにらやぐむいやよー イーヘー、エートゥーエー

    エーかなやぐむいやよー イーヘー、エートゥーエー

    エーまくぶ魚[いゆ]ーやよー イーヘー、エートゥーエー

    エー砂掘[しなふ]ゆーいよー イーヘー、エートゥーエー

    エーたまん魚[いゆ]ーやよー イーヘー、エートゥーエー

    エー潮廻[すーま]ちゅーいよー イーヘー、エートゥーエー

    エー白綱[しらちな]ーひよー イーヘー、エートゥーエー

    エー打ちへーりわよー イーヘー、エートゥーエー

    エー寄[ゆ]せてくーわよー イーヘー、エートゥーエー

    エー大網[うふあみ]ーしよー イーヘー、エートゥーエー

    エー打ち寄[ゆ]ーていよー イーヘー、エートゥーエー

    エー大[うふ]とぅだーしよー イーヘー、エートゥーエー

    エー突[ち]ちんきーわよー イーヘー、エートゥーエー

    エー抜ちんきーわよー イーヘー、エートゥーエー

    エー大[うふ]がさしーやよー イーヘー、エートゥーエー

    エー主[ぬし]がにーとぅよー イーヘー、エートゥーエー

    エー長さしーやよー イーヘー、エートゥーエー

    エー野呂[のろ]がにーどぅよー イーヘー、エートゥーエー

  • (以下、訳)

    伊集の樹は

    ナズの樹は

    ニライの海は

    カナイの海は

    マクブ魚は

    砂を掘って隠れる

    タマン魚は

    渦を巻くように群れを成す

    白網(延縄の美称辞)を

    大きく張れ

    一心に引け

    取り込み網で

    掬い上げよ

    大モリを

    打ち込んで

    突き捕獲せよ

    大型のマクブ(初物)は

    ノロ様に(差し上げよ)

    美身なるタマン(初物)は

    ノロ様に(差し上げよ)

トゥダぬ魚[いゆ] 御願[うがん]

トートゥ トートゥ ウートートゥ。

平安座村ぬ 三月ぬサリー、

中ぬ三月ぬサリー、竜宮ぬ神ん、かいぬ、

御願[うがん]ぬ トゥダ やびる。

平安座島やサリー、ニラヤー、グムイ、

カナヤー、グムイからん、

黒魚[くるいゆ]ー押し寄してぃ うたびみそーち、

海ゆがふー、陸ゆがふー、

でぃきらち うたびみそーち、

平安座村や栄[さかい]ぐみ うたびみ ソーリ、

ウートートゥ。

ナンザモーイ

  • ナンザ拝みの風景
  • ナンザ拝みの風景
  • ナンザ拝みの風景

トゥダヌイユーが終わると、平安座島の東の沖合500mほどのところにあるナンザという岩を目指して道ズネー(パレード)が始まります。

形はタマン、色彩はマクブを模した巨大な魚の神輿を担ぎ、人々は仮装しながら島を練り歩き東の浜に移動します。そのまま干潮の時間に合わせてナンザ岩に渡り、岩の頂上で東の海にあるというニライカナイに向け供物を捧げ、豊漁を祈願します。(モーイは詣でるの意)供物は御神酒、米、タコを刻んだもの、果物で、ニライカナイの神がいるとされる東の海に向かい「魚群を平安座に押し寄せてくれ」と、大漁豊漁の祈願をします。拝みが終わると御神酒とタコの切り身は参加者にふるまわれます。

銀座拝み御願(なんざうがみ うがん)

サリ、ウトートゥ、トートゥ

今年、〇年(干支をとなえる)三月、三月遊び中ぬ日に平安座国元から

竜宮ぬ神んかいぬ、御願[うにげ]立ちでぇびる。

銀座[なんざ]ビンシー、黄金[くがに]ビンシー、供[う]さぎ立ててぃ御願立ちさびらは、

受取[うきと]い美[ぢゅ]らさ御賜[うたび]みそうち、ニライ海底[ぐむい]、カナイ海底までん、

お通しう御賜みそうち、マクブ魚[いゆ]、タマン魚や平安座ぬ港かい

寄[ゆ]してう御賜みそうち、海世果報[うみゆがふ]、陸世果報[あぎゆがふ]出来[でぃき]らち御賜みそうち、

笑い福らち御賜みそうり。

海ぬ仕事ん陸ぬ仕事ん、安全願[にげ]らち御賜みそうり。

平安座御万人[うまんちゅ]ぬ身体健康とぅ平安座国元ぬ発展、叶わちくみそうり。

サリ、ウトートゥ、トートゥ

銀座ビンシー、黄金ビンシー、供さぎ立ててぃ御願立ち申ぎやびらは、

御願事[うにげーぐぅと]、叶わち御賜みそうり。

ウトートゥ、トートゥ

ナンザモーイから帰る頃になると、神人と村人が浜に下り、三味線、太鼓、を打ち鳴らし、三月旗をあげて歌い踊り「ナンザ帰り」を迎えます。

現在は、ナンザモーイに一般の方も参加できますので膝くらいまで海につかり、歩きながら潮干狩りをすることも出来ます。

三日目(旧暦3月5日)

チナアギモーイ

三日目には、海人が執り行うのチナアギモーイ(綱あぎ舞い)がありました。

かつては、ナンザに渡るナンザモーイと東西両方から干潟におしよせて遊ぶチナアギモーイがあり、隔年毎に行われていましたが、現在ではナンザモーイが毎年行われ3日目は自治会館での祝宴となっています。

他の行事を見る